メジャー第2戦・PGA選手権2026がいよいよ今週開幕する。 舞台はペンシルベニア州ニュータウンスクエアにある名門アロニミンクゴルフクラブ。 前回の開催は1962年——実に64年ぶりのメジャー復帰となる。 この記事では、コースの歴史・設計の妙・難関ホールを徹底解説する。

PGA選手権2026 大会基本情報

項目詳細
大会名108th PGA Championship
開催地アロニミンクゴルフクラブ(ペンシルベニア州ニュータウンスクエア)
競技日程2026年5月14日(木)〜17日(日)
練習ラウンド5月11日〜13日
コース(ヤード)7,237ヤード / パー70
バンカー数180個
前回開催1962年(ゲーリー・プレーヤー優勝、-2で優勝)
放送(米国)R1〜R2:ESPN / R3〜R4:CBS

伝説の設計家ドナルド・ロスの「傑作」

アロニミンクゴルフクラブの歴史は1896年に遡る。 当初は「ベルモントゴルフアソシエーション」として設立され、1926年に現在のニュータウンスクエアに300エーカーの土地を購入。 1928年のメモリアルデーに現在のクラブハウスへ移転し、正式開場した。

コースを設計したのは、スコットランド出身の伝説的建築家ドナルド・ロス。 米国ゴルフ界に多大な影響を与えた彼は、設計完成時にこう述べた。

ドナルド・ロス(コース設計家)

「自分の傑作にするつもりだったが、今日になって自分が思った以上の出来に仕上がったと気づいた。」

その言葉が示すとおり、1928年に完成したコースのグリーン・フェアウェイ・ハザードは今日に至るまで当時の設計のまま維持されており、ロスの哲学が100年近くを経た今も生きている。

コースの特徴:180個のバンカーと戦略性

アロニミンクゴルフクラブ クラブハウス外観

アロニミンクは、全米で最もバンカーが多いメジャー開催コースの一つで、180個もの砂罠がコース全体に戦略的に配置されている。 距離は7,237ヤード・パー70という設定で、飛距離よりも精度と思考力が問われる。

i コース設計の哲学

ドナルド・ロス設計の哲学は「パワーゲームより精度を重視」。フェアウェイは適度に起伏し、小さめのバンカーは深さと角度が絶妙で、プロでも難しいスタンスを強いる。近年の飛距離革命が支配するメジャーと一線を画す、本格的なマネジメントを必要とするコースだ。

マキロイは「2018年BMWチャンピオンシップで雨だったときより、はるかに速くてコースが固い」と語っており、ファームかつファストなグリーンが難度を高めている。

バンカーの特徴は、その小ささと積み重なりによる視覚的トリック。小さなバンカーが層をなして並ぶことで奥行き感が狂い、判断を誤らせやすい。 また複数の谷・丘・ドッグレッグがコースに変化を与え、9ホールごとに風景が変わる多様性を誇る。

注目の難関ホール3選

10
10番ホール(パー4・454ヤード)
後半最難関・水ハザードが左を守る

後半スタートの10番は、多くの専門家が「コース最難関」と評するホール。右にバンカー、左にディープラフが絞り込む狭いフェアウェイに加え、グリーン手前左側を守る水ハザードが精神的プレッシャーを高める。急勾配のテラス状グリーンは2パットさえ難しく、スコアを崩す選手が続出しそうだ。

17
17番ホール(パー3・ロングアイアン距離)
左サイド全体に池・ドラマ必至の1打

わずかに打ち下ろす長めのパー3は、グリーン左サイドを池が全面的に覆う設計。左に外れた球はほぼ確実に入水し、センターを狙っても大きな2パットが残る。2025年のトラストチャンピオンシップでは、ここでダブルボギーを叩いた選手がトップを失ったシーンがあり、順位が大きく動くドラマポイントになる可能性が高い。

18
18番ホール(パー4・最終ホール)
優勝が決まる大詰めの1番

クラブハウスを背景に繰り広げられるフィナーレ。ギャラリーに囲まれた中でのフェアウェイキープと、止まりにくいグリーンへのアプローチが勝負を分ける。1962年の優勝スコアが「-2」だったように、タフなセッティングは今週も容赦ないだろう。

1962年の記憶:ゲーリー・プレーヤーが制した前回の覇者

アロニミンクが最後にメジャーを開催したのは1962年。 その時の覇者は南アフリカの名手ゲーリー・プレーヤーだ。 パー70の難コースを通算-2(278ストローク)でまとめ、ボブ・ゴールビーとのデッドヒートを制した。

当時の「-2優勝」が示すように、このコースでは大量アンダーパーを叩き出すことが難しい。 現代の飛距離革命や器具の進化を考慮しても、コースセッティング次第では一桁アンダーが優勝ラインになる可能性も十分にある。

! 飛距離より精度が問われる難コース

近年のメジャーでは飛距離優先の戦略が有効だが、アロニミンクは「パワーよりショットメイキング」を要求する。バンカーのレイアウトと小さめのグリーンは、毎打の判断力と技術の正確さを問う。世界ランキング上位であっても、このコースへの適応力が最大の鍵になる。

このコースに合う注目選手プロファイル

スコッティ・シェフラー - PGA選手権2026ディフェンディングチャンピオン
スコッティ・シェフラー(世界1位・米国)
ディフェンディングチャンピオン/今季3連続2位
昨年の覇者として連覇を狙う。2025年PGA選手権では5打差を逆転されながらも最終的に5打差で優勝した「ドラマチックな逃げ切り」が記憶に新しい。今季はトラストチャンピオンシップを含む3大会で連続2位と好調。アロニミンクを準備のため徹底的に研究し、準備万全の状態で臨む。
ローリー・マキロイ - 2026マスターズ連覇王者
ローリー・マキロイ(世界2位・北アイルランド)
マスターズ2連覇王者/キャリアグランドスラム達成済み
2025年マスターズでキャリアグランドスラムを達成し、2026年も連覇。今年さらにPGA選手権を制せば、史上稀な「同年2メジャー制覇」が現実となる。「今まで以上にモチベーションが高い」と語っており、アロニミンクでの準備に1週間以上費やした。
松山英樹 - PGA選手権2026日本代表選手
松山英樹(日本)
2021年マスターズ王者/アジアのゴルフ界のレジェンド
2021年マスターズ制覇でアジア人初の4大メジャー制覇を果たした松山。今季も安定した成績を続けており、アロニミンクのショット精度重視の設計は松山のスタイルと相性が良い。パー70の難コースで彼がどのようなアプローチを見せるか注目だ。
ホン・ラーム - LIVゴルフからPGA選手権2026に出場
ホン・ラーム(スペイン・LIVゴルフ)
世界ランキング上位/DP世界ツアーと合意締結
LIVゴルフからの参戦組の中で最も優勝に近い存在。2024年以降LIVで活躍し、今季も複数勝利。さらにDP世界ツアーと未払い罰金を清算し合意を締結、ライダーカップ2027の出場権も回復した。LIVゴルフのPIFが資金援助を2026年末で終了するという背景の中で、ラームのアロニミンクでの戦いはとりわけ注目される。

日本勢の展望:松山英樹・モリカワ・比嘉一貴

PGA選手権2026のフィールドには松山英樹をはじめとする日本ゆかりの選手も複数出場する。 アロニミンクは飛距離よりも正確なショットメイキングが問われるコースであり、日本選手のプレースタイルとの相性は決して悪くない。

松山は今季も着実にポイントを積み重ね、コンシステントな成績を維持している。 2021年マスターズから5年が経過し、円熟のゴルフでもう一度メジャートロフィーを狙う姿が期待される。 また、米カレッジゴルフ出身のコリン・モリカワは今季背中のコンディションを整えながら復帰しており、アロニミンクの精度重視コースはモリカワの持ち味が最大限に生きる舞台となりうる。

i 観戦ポイント:スコアの動きを読む鍵

前半:ドッグレッグが多く、位置取りが後半を左右する。バンカー回避の判断が鍵。

後半:10番の難関スタートから、水ハザードが多い16〜17番でドラマが生まれやすい。

グリーン:ファームかつファストな傾斜グリーンは2パットが難しく、パッティング力が最終スコアに直結する。

まとめ:「精度の殿堂」で誰が勝利するか

アロニミンクゴルフクラブは、パワーゲームが席巻する現代のプロゴルフにおいて、オールドスクールな戦略性と正確さを問い直す舞台だ。 64年ぶりに帰ってくるメジャーで、最後に「ドナルド・ロスの傑作」を征服するのは誰か——。

シェフラーの連覇か、マキロイの同年2メジャーか、それとも松山英樹の再びの歓喜か。 5月14日(木)の開幕が待ち遠しい。

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